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September 18, 2003

SESSION #023 「永訣の日」

ボクの実家にはボクよりちょうど12歳年下になる兄弟同然に暮らしてきた飼い犬がいました。

「いました」 と、過去形で書いたのは、母親からその犬が亡くなったとの連絡があったからです。 享年は14歳。 11月に誕生日を迎えれれば15歳になるという人間で言えば100歳くらいの老犬は、昨日、母親が仕事から帰ってきた時にはもうすでに体は冷たくなっており、どれだけ声を掛けてももう動くことも目を開けることもなかったそうです。

以前に病気を患い動物病院に入院した際、過去の例からも二年以上もった例はありませんと獣医から言われていましたが余程わが家の住み心地がよかったのか、それから実に三年半ほども余生を送ることができたってことがせめてものなぐさめです。

ボクが小学校6年生の時に生後まもなくで我が家にもらわれて来て、少年時代のボクとはよく一緒に遊び、時にはお互い本気になって取っ組み合いのケンカをして親から怒られたりと、一緒に成長していたつもりが成長の早いアイツのほうが先に大人になり、気付いたら老犬になってました。 その間は実に14年間。 ボクも中学生になり高校生になり大学生になり社会人にもなりました。 当たり前のようにすごした14年間、ボクも充分に大人になったと思える年頃になったころ、アイツは先に逝ってしまいました。

永眠する前日の夜、たまたま実家に帰っていたボクは、普通に食事をし横になって寝転んでる、いつものとおりの彼の姿を見ていました。 何も不吉な予感も妙な胸騒ぎもない、ごく普通な日がけっきょく彼との別れの日でした。 外ヅラが良く、食い意地が張っていて、好きなモノ嫌いなモノにはトコトンこだわる、そんな、ボクにどことなくよく似ていた困りモノの老犬は、自分の死期を知っていたのか、家族の誰かに迷惑を掛けることなくひっそりと息を引き取ったそうです。

彼をもっとも可愛がっていた父は今日、仕事を休み、庭の片隅に小さなお墓を造りました。 顔を見ると別れがつらくなるのでボクは埋葬の終わった夕方に実家に帰り、できたばかりのその小さなお墓に手を合わせました。

生き物である以上いつか必ず来る死別という時。 一足先に「あちらがわ」の住人になってしまった彼に、いつか自分も遅かれ早かれ「あちらがわ」まで会いに逝く日がくるのでしょう。 またそこで取っ組み合いのケンカでもできる日をせめてむこうで待っていてほしいものです。

冥福を祈ります。

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